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根拠なき越境

4~7月までの間、こういう話を何回か聞いた。「大阪万博でサラリーマンより稼いでいるし~(サラリーマンを卑下する発言)」

正直呆れた。そしてそういう学生ほど自分の市場価値と身の程を分かっていないと実感した。

仮にサラリーマンがいなかったら、

誰が多額の税金を納めるのか。

誰が社会インフラを支える資金を生み出すのか。  

誰が安定した消費活動を通じて経済を循環させるのか。  

誰が企業の持続的な成長を支える日々の業務を担うのか。  

誰が年金制度や医療制度を維持するための保険料を継続的に支払うのか。  

誰が災害時や緊急時に組織的に動き、復旧を支えるのか。  

誰が技術や知識を蓄積し、次世代に継承するのか。  

誰が地域社会の安定に貢献し、家族を守る生活基盤を築くのか。


万博という一過性のイベントに関わっただけで、まるで自分が社会を動かす側に回ったかのような錯覚に陥っている人たちがいる。彼ら一部の人は「自分>サラリーマン」といった図式を脳内で描き、既存の社会構造を超越したつもりでいるが、それは単なる根拠なき越境に過ぎない。

「万博に関わった」=「社会変革の担い手」などという飛躍は、履き慣れていない下駄で全力疾走しているようなもの。見た目は派手でも、足元は不安定だ。

 実績も思想もないまま、肩書きやイベントの熱狂に乗じて自己を肥大化させる姿は、まるで空虚なブランドロゴを貼り付けただけの空箱。「越境」という言葉には本来、境界を乗り越える知性や覚悟が伴うはずだが、彼らのそれは単なる自己陶酔的なジャンプでしかない。

万博という下駄は、履く者の足元を高く見せるが、地に足がついていなければ、いずれ転ぶ。真の越境とは、根拠と実践に裏打ちされた歩みである。イベントの余熱で浮かれている間に、現実の冷気はすぐそこまで迫っている。あと2か月くらいで自分の市場価値を知るだろうね。

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